『合理的選択と戦争への道』 インスクエア ビジネスニュース Vol.1172
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■━━━━━━[vol.1172]2016/12/27━■
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01 ┃本日のコラム －
┃『 合理的選択と戦争への道 』
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┃ ／ 重村達郎（弁護士）
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師走もいよいよ押し詰まって来ましたが、２８日までに裁判所
に提出しなければならない書面などがたまって、相変わらずばた
ばたしており、先日は、本当に裁判所の廊下を走ってしまいまし
た。
２３日が休日で官庁や銀行も休みなので、かえって日程が圧縮
される感じで、市役所―中之島一帯の家族や恋人達で賑わうきら
びやかな光のプロムナードを、事務所からの帰り道でやむを得ず、
逆方向に早足で通り抜ける毎日です。
クリボッチではありませんが、俺はまだ仕事をしているぞとい
う妙な満足感と反面の、格差社会における無駄と虚飾の光景が
「こうやって戦争になるのかも」という漠然とした予感をかきた
てます。
今年は、英国のＥＵ離脱、トランプの当選、欧州での相次ぐ無
差別テロと不確実性の出来事が世界を覆いました。そんな中で、
日本の社会構造と今後の行方を考える中で、余り目立たないけれ
ども注目すべき報道がされています。
一つは、今や全従業員の４割を占めるに至った非正規労働者と
正社員との間での同一賃金同一労働の実現に向け、賃金のあり方
や不合理な待遇差を示した政府のガイドライン案です。
業績給としての賞与は非正規労働者にも貢献度に応じて同一に
支払うこと、基本給を決める要素を職業経験や能力、業績・成果、
勤続年数の３つに分類し、各要素が同一なら同水準の支給を原則
とすること、時間外勤務や深夜・休日手当の割増率、通勤手当、
福利厚生の利用等も正社員と同一を促す・・
政府は年明けから関連する法律の改正作業を本格化させる予定
で、ガイドラインとはいえ、企業は賃金制度や職務規程の改定を
迫られる見通しです。
もう一つは、日本社会における二重構造のもう一つ、中小企業
政策をめぐり、中小企業庁と公正取引委員会は、年内に、大企業
と中小企業の下請取引について、下請への代金支払を長年の商慣
習であった手形払から現金払を原則とする通達を出すそうで、ト
ヨタはこれに先駆け、下請代金を原則現金で支払う方針を固めた
とのことです。
通達では、同時に、手形を使う場合でも、サイト期間を現在最
も多い120日以内から大幅に短縮し、将来は60日以内にするよう
明記されるようです。
現在でも手形訴訟はほとんど影を潜めていますが、中小企業に
とっても手形割引にかかるコストの軽減になれば，利益と波及効
果は大きいものがあります。他方、銀行は利ざやの対象が減るの
で、やくざと同じでますますシノギを削ることになるかも知れま
せんが、健全な社会再建に向けた動きではあります。
今、通勤電車の中で、加藤陽子という東大の歴史の先生が本来
高校生の特別講義用に書いた『戦争まで』（朝日出版社）を興味深
く読み進めています。
戦前、日本が戦争に至る過程で、リットン調査団報告書―国際
連盟脱退、日独伊三国軍事同盟締結、戦争前夜の日米交渉と大き
な選択の時期があり、実際に政府や軍の中でも議論や意見対立が
あったこと、にもかかわらず国民が十分な情報と適切な選択肢を
示されないまま、戦争に突き進んでいった経過がわかりやすく書
かれています。
国力や地政学的関係からも非合理的な選択だとわかっていなが
ら、なぜ当時の国民が見かけだけの確実性にだまされたり、指導
層が世界の普遍的な理念に背を向け、最終的に戦争に突き進み、
戦争に賭けたのか。
敗北を抱きしめて、長らく平和のありがたさを実感したあと、
その記憶が薄れつつある中で、いかに戦争への道を阻止するのか、
日本が大きな曲がり角，選択肢の中に置かれていることは確かな
ようです。
先頃、確率・合理的選択か否かはともかく、年末宝くじをジャ
ンボとミニの２種類各３千円、購入しました。今年の話題作、蓮
見重彦著の『伯爵夫人』ではありませんが、「戦争だ」という空気
が時代の空気にならないように願いたいものです。それでは皆さ
ん、よいお年を。
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▼プロフィール：
・氏名：重村達郎（しげむらたつろう）
・ひまわり総合法律事務所 弁護士（大阪弁護士会）
t-shigemura@himawarilaw.com
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京都大学法学部･経済学部卒
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